100%オーストラリア

30代で海外移住し現在アラフォーの著者が将来は時間やお金の制限のないライフスタイルを持つ事を目標にオーストラリアでのライフスタイルを綴っています。

道具を愛する美容師

オーストラリアで美容師を続けていますが、日本とオーストラリアでの道具の扱い方が異常に違うことにびっくりしました。

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日本では私は長野県の美容室に10年間お世話になりました。

その時の上司がまだ見習いだった時のことを話してくれたことがあります。

その上司が東京の美容室で働いていた時のこと、若かった彼は先輩のハサミを床に落としてしまったのだそう。

美容師にとってハサミを床に落とすのはあってはいけないことです。

ハサミの刃先はとても繊細で落としたときに欠けることがあるのですが、欠けてるところが深いとハサミを研がなければなりません。

かけが深ければ深いほどたくさん研ぐことになります。

普段のハサミを研ぐ研ぎ師さんは、できるだけハサミを削らないように大袈裟にいうと目に見えないようなレベルでハサミを研ぎます。

そうすることでハサミの寿命が伸びるから。

そして刃先はシャープなので薄くなっているため落としたり、コームを噛んだりするとかけるのです。

普通に使っていても徐々に刃先が立たなくなってキレが悪くなるので定期的に研ぎが必要になります。

そしてこの研ぎ師さんも私たち美容師にとってはとても重要な人物です。

私は信用できる研ぎ師さんに毎年日本に帰るたびにお願いしていますが、研ぐと言っても先ほど説明した表にただ研げばいいものでなく、できるだけ削らないように研いでもらうことでハサミを長持ちさせることができるのです。

そして私の研ぎ師さんは「どんなふうにハサミを使うのか?」を聞いてくれるので多分そのカットの仕方に合わせて研いでくれているのだと思います。

そしてうまく研いでもらうと自分の腕が上がったように感じたりもするのです。

かけたままのハサミを使い続けるとかけた場所がどんどん広かっていずれは使い物にならなくなるのでしょう。

だから落としたハサミはすぐに休ませて違うハサミを使うことになります。

美容師の中にはハサミをたくさん持っている人もいるけれど私は主に2つのハサミをセニングシザーで3つを使い回しています。

私たちはハサミでご飯を食べているようなもの、極端な話、道具が使いものにならなければご飯が食べられませんから。

 

それから、その上司の先輩のハサミの話ですが、もしかしたらもう生きていられないかもしれないと覚悟を決めて先輩に白状したと冗談まじりに話してくれました。

もちろん、その命は助かったんですけどね。

というくらい、日本の美容師にとってハサミが大事なものだということがお分かりいただけたでしょうか?

 

それがオーストラリアに来るとどうでしょう?

切れなくなったら新しいハサミを買えばいい。

落としたって平気。

誰でも触れるようなところに放置されている。

そもそもハサミの刃先が噛み合っていない。(そんなの使っていたらいつか体を壊すレベル、むしろどうやって切っているのかわからないくらい刃先があっていない。逆にそのハサミを髪をカットするハサミとして使えていることに感心する)

こんな扱いなんですね。

だから人のハサミを落としたってなんとも思わないわけです。

実は私は一度それに我慢できず働いていた店を辞めたことがあります。

 

なぜこんなに道具の話をしているのかというと、私の普段使っている一つ目のハサミがついに限界を迎えつつあります。

2019年に日本で研いできたもの。

二丁あったのですが、一丁は去年初めてオーストラリアでアジア人の研ぎ師さんがお店に来てハサミを研いでくれたのです。

半信半疑でしたが、日本に帰れない今、彼を信じることにしました。

良いところはお店に中で目に見える場所でハサミを研いでくれたこと。

海外だとハサミを研ぎにだしたら戻ってこなかったなんてこともあるみたいなので。

そのハサミをいよいよ使ってみたのでした。

切れ味の良さに感激しております。

ハサミがシャープだとカットの時間も早いし、狙ったところがちゃんと切れる。

切る時の感覚が軽い。

ボブなどのラインが大事なスタイルは本当にキレるハサミに感謝しています。

その分自分の手もよく切りますが。

 

こんな微妙な話を長々としてしまってすみません。

それほどキレるハサミが美容師にとっては嬉しいことなんです。

だから道具を大切にできない人とは本当は一緒に働きたくないんですよね。

だって何かあってもその悲しさをわかってもらえないから。

オーストラリアではハサミを2回他人に落とされています。

あれは本当にショックでしたね。。