美容室には髪の毛をカットするお客さんがたくさんきます。
色々な人が来ますが、今日来てくれたお客さんは、一番短いバリカンで丸坊主にして欲しいとのことでした。
勘が良い人ならわかると思いますが、放射線治療をしている女性の方だったのです。
初めに受付した時、私は正直、自分が担当にならなければいいなと思っていました。
なぜなら、どう対応していいかわからなかったのと、実際に抜け落ちる髪の毛を触ることになるのが少し怖かったこと、女性の髪をバリカンで短くすることに少し抵抗があったのです。
そして、そう思っていると担当は回ってくるのですね。
私がその女性のカットをすることになってしまいました。
何年も美容師をしていますが、すきバサミですいたようにバサバサと抜け落ちる髪の毛を触っていたら、涙目になってしまったのです。
それでもそのお客さんはりんとしていらっしゃいました。
その姿を見て、恥ずかしいことに私は勝手にお客さんのことを知ったようになって勝手に悲しんでいたことに気づきました。
そのかたは、抜け落ちる髪が家中にあることへのストレスを減らしたい、全てが抜け落ちるけどまた生えてくることを知っている、それがどんな感じになるのかが楽しみなこと、今日髪を切ったとしても被る帽子を持ってきてる。など、全て準備して承知して髪を切りに来ていたのです。
人はもともと強いものなんですね。
表面だけを見て同情してしまったのですが、そんな必要は全くなかったのだなと感じました。
私は美容師としての仕事を、精一杯することが私のするべきことだったんです。